1. 日本チェロ協会会報 第56号 （2020年10月31日）より

1.近況を教えてください 

2021年に米寿を迎えます。2015年にロータリークラブでの演奏会で「白鳥」の本番中に脳出血で倒れてしまいましたが、演奏家の心掛けを応用して前向きに人一倍頑張り、驚異の回復を遂げました。リハビリ病院では堤剛会長所縁の看護師長さんに偶然担当してもらったり、入居している施設ではアメリカチェロ協会を創設された日本人の渥美さん所縁の方がインタビューに訪れたり、チェロのもたらした幸運のお陰で楽しく毎日を過ごしています。 

• 演奏家の心掛けについて教えてください

　目に見えて効果がでていなくても、信じたことを規則正しく励行、急がば回れです。真実はその中に有ります。実際面では、体幹を鍛えていつも姿勢よく、利き手以外の左右も同様に使う、練習あるのみ、というような意識です。 

2.チェロを始めたきっかけを教えて頂けますか？ 

9歳年長の次兄で作曲家の孝順(筆名高順)の勧めによります。 

3.一番ワクワクするときは、どんなときですか？ 

素晴らしい演奏のチェロを聴いた時です。80歳過ぎてから奏法で新たな発見を実感した時もです。N響に入団した頃の錚々たるソリスト、カサド、ピアティゴルスキー、フルニエ、ロストロ、1960年の世界一周演奏旅行で弱冠18歳のソリストとして同行された堤剛さんにも、ワクワクしました。 

（余談ですが、この世界一周旅行の途中イタリアで、恩師吉田貴壽先生がカピキオーニに注文しておいて下さった新作チェロの製作進捗状況を、指揮者の外山雄三氏がイタリア語で尋ねてくれたのもワクワクしました。） 

• （堤さんとの）エピソードについてお話いただけますか。

堤剛さん中村紘子さん二人のソリストとも天才少年少女だから、僕達悪い楽員とは付き合わない！ので、あんまりエピソードも無いですが、ロンドンで振袖で弾いた中村さんに対し堤さんは気取らない性格の方という印象で、だから？ステージの上で短いソックスで脛がむき出しでマネジメントの音楽芸術家協会の方に注意したとか、あったなあ！N響の練習所でも早々と来て、ソロ用の高い台の上で音階をさらったり、真面目な方だったですね～。 

4.チェロ以外に好きなことはありますか？ 

花を育てる、近年は時間もあるので「読書」、放送番組で音楽鑑賞し最新の音楽情報を常にチェックすること、中学・高校時代に夢中になったスキーもです。 

5.プロのチェリストを目指している学生や若いチェリストに望むことはありますか？ 

プロアマを問わず、教養を深めること。若いチェリスト達のけれん味の無い演奏には、脱帽しますが、私は片麻痺で演奏もままならなくなる直前の82歳のリサイタルが予期せぬ最後の演奏会になりました。悔いのないようにどんどん活動してください。